ホルムズ海峡で何か起きるたびに、「株価が大暴落する!」というニュースが出て怖いです。持っている株は全部売ったほうがいいのでしょうか?
お気持ちはよく分かります。中東の地政学リスクはインパクトが大きいため、パニックになりがちですよね。しかし実は、有事の際にすべての株が下がるわけではなく、むしろ大きく買われる銘柄も存在しているんです。
この記事では、地政学アナリストの視点から、過去の相場データをもとに「ホルムズ海峡の緊張で上がりやすい銘柄と下がりやすい銘柄」の構造を明らかにします。
これを読むことで、ヘッドラインに一喜一憂せず、有事相場における勝者と敗者のメカニズムを冷静に判断できるようになります。
なお、本記事は経産省や資源エネルギー庁の公開データ、および過去の相場動向に基づき、客観的な事実から構成しています。
この記事でわかること
- ホルムズ海峡の緊張で買われるセクターと売られるセクターの構造
- INPEXなどの資源株が原油高でどう反応するかのメカニズム
- 海運株がニュース一つで乱高下(急騰・急落)する理由
- 「有事=すべて下がる」という初心者の思い込みがなぜ危険か
- 代替ルートの港湾建設や原発回帰など、中長期で注目されるテーマの背景
ホルムズ海峡の緊張で株価が変動しやすい銘柄・セクターとは


具体的に、どんな銘柄が上がりやすくて、どんな銘柄が下がりやすいんですか?
ズバリ、原油の価格が上がることで儲かる会社と、燃料代が高くなって損をする会社で、真っ二つに分かれるんです。
この章では、有事の際に株式市場で資金がどのように移動するのか、その構造的な理由をセクターごとに解説します。
原油価格と連動する「エネルギー・資源開発銘柄」(INPEXなど)の構造
中東情勢が緊迫化し、原油価格が高騰すると、真っ先に買われるのがエネルギーや資源開発を手がける企業です。
代表例であるINPEX(インペックス)は、中東情勢の激化が報じられた際、原油高メリットが意識されて一時前週末比で10%超も急上昇するなど、投資家の資金が集中しやすい特徴があります。
(出典: Minkabu)
「ホルムズ海峡が通れなくなったら、INPEXの事業も止まるのでは?」と心配する方もいますが、同社の主要な権益はオセアニア地域などにも分散しています。会社側の資料でも「地政学リスクが当社操業に与える影響は限定的」とされており、純粋に原油価格上昇の恩恵を受けやすい構造になっています。
INPEXの調達先多角化への動き
近年、INPEXはホルムズ海峡のリスクを回避するため、カザフスタンの「カシャガン油田」やアゼルバイジャンの「ACG油田」など中央アジア産原油を日本へ優先的に販売し、スエズ運河等の代替ルートを活用する動きを強めています。こうしたリスク分散も投資家から評価される一因です。
運賃上昇期待とリスクが交錯する「海運株」(日本郵船など)
続いて注目されるのが、日本郵船や商船三井などの海運株です。
海峡の通航リスクが高まると、船舶の保険料が跳ね上がり、安全な迂回ルートを通るために輸送距離が伸びます。これにより「運賃の上昇」や「船の需給逼迫」が起きるという連想から、株が買われやすくなります。
しかし、海運株の値動きは非常に荒い点に注意が必要です。封鎖観測で急騰した翌日に「通航再開の期待」というニュースで急落し、さらにその翌日には「一部の船舶が通過した」というヘッドラインで再び急騰するなど、短期間で激しい乱高下を見せます。
燃料コスト増が重荷となる「空運・素材・化学セクター」
逆に、強烈な逆風(株価下落の要因)となるセクターもあります。
代表的なのは空運(航空会社)や、素材・化学メーカーです。航空燃料や、プラスチックの原料となるナフサ(粗製ガソリン)の価格が上昇するため、製造コストが大きく膨らみ、利益を圧迫します。
遠い中東の出来事が、航空券の価格や物流費に直結し、こうした企業の株価を押し下げる要因となっているのです。
中東依存度95%の日本経済全体への波及メカニズム
なぜ日本の市場はこれほど敏感に反応するのでしょうか。
それは、日本のエネルギー構造が異常なほど中東に偏っているためです。JETROなどのデータによると、日本の原油輸入における「中東依存度」は95%を超えて推移しています。
(出典: JETRO)
世界の海上原油の約2割が通過するホルムズ海峡に、日本は自国の生命線の95%以上を依存しています。ここが止まれば、インフレ経路を通じて日本経済全体に波及することは避けられません。
【番号リスト】
- 資源開発(INPEX等)や商社は原油高メリットで買われやすい
- 海運株は運賃上昇期待で動意づくが、ニュースによる乱高下が激しい
- 空運や素材・化学は燃料コスト増が重荷となり下落しやすい
このようにセクターごとで明暗が分かれることがお分かりいただけたと思います。では、実際の有事の際に、多くの投資家はどのような罠にハマってしまうのでしょうか?
有事の際に初心者が陥りやすい「投資の誤解」と現場のリアル


戦争が起きたら、とりあえず手持ちの株は全部売って現金にしておいた方が安全ですよね?
実はそれこそが、一番やってはいけない「初心者特有の誤解」なんです。現場のリアルを見てみましょう。
ここでは、有事のヘッドラインに踊らされてパニック売りをしてしまう心理と、相場の裏側で起きている事実を紐解きます。
誤解1:「有事=すべての株が下がる」という思い込み
日経平均株価全体で見れば、原油高によるコスト増を嫌気して下落する傾向があります。実際、封鎖長期化への警戒から日経平均が急落する局面は過去に何度も見られました。
しかし、前述の通り資源株や一部の商社株は買われます。市場のプロたちは、「ホルムズ海峡封鎖で原油高・円安だからといって『全部売る』のは素人だ。こういう時ほど本命の押し目を拾うべき」という冷静な視点を持っています。
有事だからといってすべてを投げ売りするのではなく、どのセクターに追い風が吹いているのか、あるいはどこが安く買えるチャンスなのかを見極めることが重要です。
誤解2:「ホルムズ海峡銘柄=原油関連だけ」という死角
「ホルムズ海峡=原油」という連想が強すぎると、別の恩恵を受ける銘柄を見落としてしまいます。
例えば、LNG(液化天然ガス)の価格も同時に高騰するため、再生可能エネルギー関連の採算性が相対的に向上するという視点があります。また、地政学リスクの影響を直接受けない内需株をリスクヘッジとして組み込む投資家も少なくありません。
封鎖長期化の懸念と一時的な緊張緩和で乱高下する相場
有事相場で最も恐ろしいのは、ニュース(ヘッドライン)で相場が逆回転するというリスクです。
「封鎖か!」というニュースで海運株に飛びついた直後に、「一部で通航が再開された」という報道が出た瞬間、高値づかみした株がナイアガラのように急落することがあります。
ニュースの表面的な言葉に踊らされず、プロのアルゴリズム取引が瞬時に反応していることを理解し、冷静に事実を確認する姿勢が求められます。
代替ルート(港湾建設)や原発回帰など中長期的なテーマへの影響
地政学リスクは、単なる一時的な株価の乱高下にとどまらず、より中長期的な世界の物流網やエネルギー政策を塗り替えつつあります。
たとえば、ホルムズ海峡を通らずに済む「代替ルート」の価値向上です。UAE東岸など、危険な海峡の外側にある港湾施設の重要性が増しており、これに関連する物流網の再設計が議論されています。
【用語解説】代替ルートのリスクプレミアム
中東の原油をホルムズ海峡を通さずに運ぶ場合、喜望峰回りなどの迂回ルートが選ばれます。これにより輸送日数とコストが増加し、それが最終的に物の値段(インフレ)として跳ね返ってきます。
さらに、化石燃料への過度な依存を脱却するため、原子力関連(小型モジュール炉など)が現実的な政策として再評価される動きも出てきています。ホルムズ海峡の緊張は、こうした壮大なテーマに投資資金を向かわせる引き金にもなっているのです。
【チェックリスト】
- 有事だからといって全ての株が下がるわけではなく、押し目買いの好機にもなる
- ヘッドライン(ニュース速報)だけで飛びつくと相場の逆回転に巻き込まれる
- 代替ルートの港湾やエネルギー安全保障など、中長期のテーマへ目を向けるべき
よくある質問(FAQ)


他にも、ホルムズ海峡のニュースを見たときに気をつけておくべきことはありますか?
はい、特によく寄せられる疑問と、その客観的な答えをいくつかまとめておきました。
この分野で実際に多い質問と、その公式・専門的な回答をまとめました。
- ホルムズ海峡の緊張で最初に注目される業種は何ですか?
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原油価格の上昇メリットを受けやすい「資源開発(INPEXなど)」「石油元売り」「商社」や、運賃上昇期待が高まる「海運株」が真っ先に注目されやすい傾向があります。
- なぜINPEX(1605)は真っ先に買われやすいのですか?
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同社はオセアニアなど中東以外の地域にも事業権益を多く持っており、中東の地政学リスクが自社の操業に与える影響が限定的とされる一方で、原油価格上昇による利益拡大の恩恵はしっかり受けられる構造になっているためです。
- 海運株は有事になれば必ず上がるのですか?
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必ずではありません。通航不安による「運賃上昇期待」で急騰することもあれば、直後に「通航再開の見込み」というニュースが出ただけで急落するなど、乱高下(ボラティリティ)が激しい点に注意が必要です。
- ホルムズ海峡が封鎖されると日本にどれくらい影響がありますか?
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日本の原油の「中東依存度」は95%を超えており、世界でも類を見ないほど高く設定されています。原油やLNGの供給不安は、ガソリン代だけでなく、電気・ガス代や物流コストの高騰を招き、日本経済全体に大きな打撃を与えます。
- ニュースを見てから株を買っても間に合いますか?
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有事関連のヘッドライン(ニュース速報)で相場が動くときは、プロのアルゴリズム取引などが瞬時に反応しています。ニュースを見てから飛び乗ると、一時的な緊張緩和のニュースで逆回転した際に高値づかみとなるリスクが大きいため、十分な注意が必要です。
ホルムズ海峡の緊張が走ったとき、「有事だから全部売りだ」とパニックになるのではなく、日本経済において資金がどこから逃げてどこに向かっているのか、その構造を冷静に見極めることが大切です。ヘッドラインに一喜一憂せず、中長期的なエネルギー安全保障の動きにも目を向けて、ご自身のリスク許容度に合った冷静な判断をしていきましょう。
本記事の情報の取り扱いについて
本記事は情報の提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却を推奨するものではありません。
投資に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。本記事の内容を利用したことによるいかなる損害についても、当サイトは一切の責任を負いません。


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